東京高等裁判所 昭和44年(ツ)61号 判決
民法一一〇条の表見代理におけるいわゆる基本代理権は、私法上の行為についての代理権に限るとする原審の考え方(同説最高裁判所昭和三九年四月二日判決)は、本人が私法上の行為についての代理権を他人に与えた場合もしくは私法上の行為について法律上他人に代理権が付与されている場合にのみ、その代理人の権限踰越行為による法律効果を本人に帰せしめることが、本人と相手方との利害較量上妥当であるという観念から発想したものであり、表見代理制度の趣旨からみて十分に理由のあるものである。所論はこれと異なる見解を述べて原判決を論難するものに過ぎないから採用の限りでない。(なお原審認定の地積変更登記申請行為は定型的なものであるから、渡辺恒雄が被上告人からこれを依頼されたとしても、必ずしも代理権の授受があつたと解する要はなく、むしろ使者と解すべきかと考える。そうすると渡辺は基本代理権を有しないことになり、この点からも民法一一〇条の適用は否定されることになる。)
(近藤 吉江 稲田)